葉酸は、妊婦さんに特に大事なビタミンです。
葉酸とは
葉酸はビタミンB群のひとつです。ビタミンB9でもあるのですが、あまりそう呼ばれることはありません。水溶性のビタミンで水に溶けやすく、アルカリ性下では熱には強く、酸性下では熱に弱い性質があります。光にも分解されやすいという性質もあります。
体内の葉酸の貯蔵として、肝臓など細胞分裂の盛んな部分に存在しています。
また体の中で腸内細菌も合成してます。
赤血球や核酸の合成やの際に、重要な役割を果たしています。
葉酸の働き
・赤血球をつくる
葉酸はビタミンB12と一緒に補酵素として、赤血球のもとの赤芽球をつくることに関与しています。赤血球は120日間で新しいものに入れ替わります。ここで葉酸が足りないと貧血のもとになります。
・核酸(DNA RNA)の合成
葉酸は、DNAやRNAの核酸やタンパク質を合成する時の補酵素です。
細胞分裂や細胞増殖の際に、正常な遺伝子の細胞を作るために、とても重要です。
妊娠初期に胎児の神経細胞が作られるので、その時に葉酸が不足すると神経管閉鎖障害が起きる可能性があります。そのほか、口唇・口蓋裂や先天性の心疾患が起きる可能性もあります。妊娠の可能性のある女性は、妊娠よりも前に取っておくことがお勧めです。また授乳中にもしっかり取りたいビタミンです。
・細胞の合成
細胞の分裂・増殖に必要なので、成長期にももちろん必要です。その他、大人になっても体の細胞は常に入れ替わっていますので、足りないと細胞の入れ替わりの早い、口の中の口内炎や舌炎などの症状が見られる場合があります。また、神経を正常に保つ働きもしています。
・動脈硬化の予防
葉酸はビタミンB6やビタミンB12と一緒に、ホモシステインというタンパク質を分解する働きがあります。このホモシステインが増えると、血管の中で血栓ができやすくなったり、動脈硬化を進めるのです。このホモシステインが減ることで、動脈硬化の予防になったり、認知症の予防になると言われています。
葉酸の必要量
(μg/日)
男性 | 女性 | |||||||
平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 上限量 | 平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 上限量 | |
0~5ヶ月 | 40 | 40 | ||||||
6~11ヶ月 | 60 | 60 | ||||||
1~2歳 | 80 | 90 | 200 | 90 | 90 | 200 | ||
3~5歳 | 90 | 100 | 300 | 90 | 110 | 300 | ||
6~7歳 | 110 | 140 | 400 | 110 | 140 | 400 | ||
8~9歳 | 130 | 160 | 500 | 130 | 160 | 500 | ||
10~11歳 | 160 | 190 | 700 | 160 | 190 | 700 | ||
12~14歳 | 200 | 240 | 900 | 200 | 240 | 900 | ||
15~17歳 | 220 | 240 | 900 | 220 | 240 | 900 | ||
18~29歳 | 200 | 240 | 900 | 200 | 240 | 900 | ||
30~49歳 | 200 | 240 | 1000 | 200 | 240 | 1000 | ||
50~64歳 | 200 | 240 | 1000 | 200 | 240 | 1000 | ||
65~74歳 | 200 | 240 | 900 | 200 | 240 | 900 | ||
75歳以上 | 200 | 240 | 900 | 200 | 240 | 900 | ||
妊婦 | +200 | +240 | ||||||
授乳婦 | +80 | +100 |
日本人の食事摂取基準2020より抜粋
葉酸の過剰症
葉酸は水溶性のビタミンで、食品から摂る分には過剰症は、ほぼ心配ありません。
ただサプリメントで多量に摂りすぎると、皮膚炎・神経障害が起こったり、亜鉛の吸収を阻害することがあります。
葉酸の欠乏症
葉酸は体内でも作られるので、普通の人は欠乏症はあまりありません。ただ飲酒や喫煙が多い人は多く葉酸を消費をするので、注意が必要です。欠乏した場合は貧血、肌荒れ、口内炎、舌炎、しびれなどが起こります。
妊婦の人が足りないと、胎児に神経管閉鎖障害などの影響が出る場合があります。
また成長期に足りないと成長障害が起きる可能性があります。
葉酸と薬の関係
ビタミンKと亜鉛の薬と葉酸を長期的に同時に摂ると、それらの体内濃度を軽減する可能性があります。
また、いくつかの薬は、葉酸の吸収や働きを阻害する可能性があります。例えば、コレスチラミン(脂質異常治療薬)、コレスチポル(胆汁酸吸収剤)、パンクレアチン(膵臓酵素)、スルファサラジン(炎症性腸疾患治療薬)など。
葉酸の多い食品
レバー、ほうれん草、からし菜、春菊など
葉酸を効果的に摂るために
加熱、光に弱いので、加熱は必要最小限で、あまり長すぎないようにしましょう。
葉酸を効果的にとるレシピ
<レバーとほうれん草のガーリック炒め>
材料 2人分
豚レバー 200g、ほうれん草 100g、にんにく 1かけ、油、みりん 大さじ1、しょうゆ 大さじ1.5
①レバーはスライスに切り、牛乳につけて臭みを抜く。
②ほうれん草は、シュウ酸を抜くために軽く茹でて水にさらし、5cm程度に切る。
③にんにくは、皮を剥きスライスに切る。
④フライパンに油を入れてからにんにくを入れ、香りが出てきたらレバーを入れて炒める。
⑤レバーの色が変わってきたら、炒めほうれん草を入れる。
⑥みりんとしょうゆを入れて味を整えて出来上がり!
イメージ
<参考>
厚生労働省 日本人の食事摂取基準2020 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
国立研究開発法人 医療基盤・健康・栄養研究所 https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail652.html
栄養素図鑑 牧野直子 新星出版社
臨床栄養ディクショナリー 山本みどり 佐々木公子 大池 教子 メディカ出版