鉄といえば、血液ですね!
鉄とは
鉄は原子番号26の元素です。地球上に多く存在し、私たちの生活の中でも鉄なべや鉄棒など、身の周りのもので目にすることも多い金属です。
体内では成人でおおよそ4g程度の鉄が存在しています。その70%が血液に存在し、ヘモグロビンとして酸素を運搬する役目や、ミオグロビンとして細胞の中で酸素を保有する働きをしています。血清や酵素の中でも重要な役割を果たしています。
あとは貯蔵鉄として必要時にすぐに出せるように、肝臓・脾臓・骨髄に蓄えています。
鉄は小腸で吸収されますが、その吸収率はわずか8%という、とても吸収されにくいミネラルなのです。それに排出もされにくいミネラルなので、取りすぎることが続くと過剰症になります。
栄養素としての鉄は2種類あり、ヘム鉄と非ヘム鉄に分けられます。ヘム鉄は肉類や魚など動物性食品に、多く含まれています。ヘム鉄はタンパク質にくっついた形で、吸収率は23%程度と非ヘム鉄に比べると、3~5倍効率よく吸収できます。非ヘム鉄は植物性の食品に多く含まれます。
貧血気味の方は、なるべくヘム鉄をしっかり摂った方が良いのです。
鉄の働き
・ヘモグロビンの材料となり全身に酸素を運ぶ
鉄は体の中で、主に血液のヘモグロビンの材料として使われています。呼吸で取り込んだ酸素と結びつき、全身に酸素を届けています。
・エネルギー産生や解毒の酵素の原料にもなる
鉄はエネルギー産生のための酵素の原料にもなります。また、肝臓で解毒する作用に関わっています。
鉄の必要量
0か月~6か月の乳児の目安量は男女とも0.5㎎/日です。その他の年齢・性別別の必要量は以下の表をご覧ください。
(㎎/日)
男性 | 女性 | |||||||
月経なし | 月経あり | |||||||
平均必要量 | 推奨量 | 耐容上限量 | 平均必要量 | 推奨量 | 平均必要量 | 推奨量 | 耐容上限量 | |
0~5ヶ月 | ||||||||
6~11ヶ月 | 3.5 | 5.0 | 3.5 | 5.0 | ||||
1~2歳 | 3.0 | 4.5 | 25 | 3.0 | 4.5 | 20 | ||
3~5歳 | 4.0 | 5.5 | 25 | 4.0 | 5.5 | 25 | ||
6~7歳 | 5.0 | 5.5 | 30 | 4.5 | 5.5 | 30 | ||
8~9歳 | 6.0 | 7.0 | 35 | 6.0 | 7.0 | 35 | ||
10~11歳 | 7.0 | 8.5 | 35 | 7.0 | 8.5 | 10.0 | 12.0 | 35 |
12~14歳 | 8.0 | 10.0 | 40 | 7.0 | 8.5 | 10.0 | 12.0 | 40 |
15~17歳 | 8.0 | 10.0 | 50 | 5.5 | 7.0 | 8.5 | 10.5 | 40 |
18~29歳 | 6.5 | 7.5 | 50 | 5.5 | 6.5 | 8.5 | 10.5 | 40 |
30~49歳 | 6.5 | 7.5 | 50 | 5.5 | 6.5 | 9.0 | 10.5 | 40 |
50~64歳 | 6.5 | 7.5 | 50 | 5.5 | 6.5 | 9.0 | 11.0 | 40 |
65~74歳 | 6.0 | 7.5 | 50 | 5.0 | 6.0 | 40 | ||
75歳以上 | 6.0 | 7.0 | 50 | 5.0 | 6.0 | 40 | ||
妊婦初期 | +2.0 | +2.5 | ||||||
中・後期 | +8.0 | +9.5 | ||||||
授乳婦 | +2.0 | +2.5 |
日本人の食事摂取基準2020より抜粋
鉄の過剰症
鉄は普通の食事では取りすぎになることは、ほぼありません。
サプリメントで一度に多くとった場合には、過剰症になることがあります。
嘔吐や便秘などの胃腸障害、不整脈、心筋障害、亜鉛の吸収障害などです。
長期的に取りすぎた場合には、肝臓に障害が起こって鉄沈着が起きたり、肝硬変や肝がんなどになる可能性があります。発がん物質の活性酸素を生成します。
また遺伝的に、鉄が体内に蓄積しやすい人がいます。体質によって取り方を調整しましょう。
鉄の欠乏症
鉄の欠乏症は有名な貧血です。貧血の90%は鉄が足りなくて起きます。血液中に含まれるヘモグロビンの量が不足し、酸素が十分に運べずに、体が酸素不足になるのです。動悸・息切れ・頭痛・倦怠感・めまいなどの症状が起こります。この時にはすでに、肝臓などに蓄積している貯蔵鉄は使われて、予備はない状況です。早めに補給をしないと酸素不足が続き、体内の代謝にも影響が起こります。
若い女性、妊婦、アスリートは貧血になりやすいので、自覚症状が出る前にバランスの良い食事で鉄をとりましょう。
血清ヘモグロビンの正常値
男性 13.0~16.6g/dl
女性 11.4~14.6g/dl
鉄を多く含む食品
豚レバー、鶏レバー、かつお、まぐろ、牛肉、ひじき、がんもどきなど
鉄の吸収を良くするために
鉄は状況によっても吸収率が変わります。吸収率を上げるのはビタミンCやクエン酸、酢酸、銅、タンパク質、発酵食品、ラクトフェリンという成分です。
逆に鉄の吸収を妨げるのはお茶に含まれるタンニン、カフェイン、ほうれん草などに含まれるシュウ酸、玄米などの穀物にふくまれるフィチン酸、卵黄に含まれるホスビチン、牛乳カゼイン、食物繊維、カルシウムなどです。
鉄なべを調理に使うと食品中に鉄が移り、鉄量を増やすことができます。
鉄と薬の関係
・H2ブロッカーの長期使用は、鉄の吸収を妨げることがあります。
・プロトンポンプ阻害薬との併用は、鉄の吸収を低下させることがあります。
・アミノサリチル酸、制酸剤、アスピリン、非ステロイド系抗炎症剤、コレスチラミン(脂質異常症改善薬)、フルオロキノロン(抗生物質)、テトラサイクリン(抗生物質)、ペニシラミン(リウマチ治療薬)、パンクレアチンなどは鉄の吸収率を低下させるため、併用の際は2時間以上空けるか、食事と共に摂取するようにしましょう。
※薬の飲み合わせについては、主治医またはかかりつけの薬剤師に確認しましょう。
鉄を効果的にとるレシピ
<レバーフライのマリネ>
材料 2人分
豚レバー 150g、牛乳、塩コショウ、醤油大さじ1.5、生姜、片栗粉、油
人参20g、ピーマン1個、玉ねぎ 1個、酢 大さじ2、砂糖小さじ2、レモン 半分
① レバーはスライスし牛乳に漬けて臭みをとり水洗いする。水気をとり、すりおろし生姜を入れた醤油に浸ける
② 人参、ピーマン、玉ねぎはスライスに切る
③ 酢・砂糖・レモン汁を合わせタレをつくり、②の野菜を漬けておく
④ レモンは飾りに少しスライスに切っておく
⑤ レバーは、片栗粉をまぶす
⑥ 160度程度に温めた油でレバーを揚げる
⑦ ⑥のレバーを③のタレに漬けて上に野菜とレモンを飾って、出来上がり!
イメージ
<参考>
厚生労働省 日本人の食事摂取基準2020 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf#search=’%E6%A0%84%E9%A4%8A%E5%9F%BA%E6%BA%96‘
国立研究開発法人 医療基盤・健康・栄養研究所 https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail38lite.html
栄養素図鑑 牧野直子 新星出版社
よくわかる栄養学の基本としくみ 中屋豊 秀和システム