(ここでは、一般的な情報をお届けします。治療中の方は、主治医の食事のアドバイスに従ってください。)
高血圧とは
血管の動脈壁にかかる圧力が高い状態をいいます。健康な血管であれば、血管が柔軟なので多少圧力がかかっても対応できるのですが、老化したり、動脈硬化のある血管は堅くなり圧力がかかることで破けることがあります。それが脳出血などの病態を引き起こします。また日常的に血圧が高いことが続くと、柔軟だった血管も動脈硬化になる可能性が高くなります。
血圧が高いと動脈硬化が進み、心臓病や腎臓病にも発展する恐れや脳梗塞、心筋梗塞になるリスクも高まります。
血圧は常に変動していて、一度測っただけでは正確なものか分からないので、できれば健診の時だけでなく日常的に自宅や職場で測った方が望ましいのです。一日を通しても、その場面場面で変動します。例えば、緊張するときは高くなったり、お風呂に入ってリラックスしたときは低くなったりします。初めは一日3~4回ぐらい測るとご自身の傾向が見えてきます。慣れてきたら朝・夕で測るのが良いでしょう。
高血圧の分類
分類 | 収縮期血圧 | 拡張期血圧 |
正常血圧 | <120 | <80 |
正常高値血圧 | 120~129 | <80 |
高値血圧 | 130~139 | 80~90 |
高血圧Ⅰ度 | 140~159 | 90~99 |
高血圧Ⅱ度 | 160~179 | 100~109 |
高血圧Ⅲ度 | ≧180 | ≧110 |
日本高血圧学会:高血圧治療ガイドラインより
血圧を下げるために
・体重が標準体重より多いと、血圧を上げる原因となるので体重のコントロールをしましょう。
・軽めのウォーキングなどの運動を続けることは、血圧を下げることにもつながります。
・タバコは血圧を上げる原因になります。できるだけ控えましょう。
・寒暖の差は血圧を上げますので、冬場のお風呂などは室内を温めたりして特に注意しましょう。
・ストレスは血圧を上げますので、ご自身なりの平和的なストレス発散法で、ストレスは溜めないようにしましょう。
・食事を下記の内容で摂ることを心がけましょう。
食事療法の基本
①塩分は一日6gまでにしましょう。
日本人の平均的な塩分摂取量(平成30年度)は10.1gです。ほとんどの方が摂りすぎているのが実情です。意識的に減らしましょう。外食や加工品が多い場合は、含まれている塩分が多いので、一日のうちで昼が外食なら、夜は薄めの味付けに調整しましょう。
普段使っているものや調味料の塩分量を確認しておきましょう。
昆布やかつお節などの出汁やレモンやお酢などの酸味、唐辛子などの辛みやスパイス類などを使うことで、違和感なく塩分を減らすことができます。
また、「塩分感覚リセット方法※」で舌の感覚が変わり、自然に減塩につながります。
②カリウムを含むものを摂るように心がけましょう。
カリウムは、体の中で塩分が含むナトリウムを体外に出す働きがあります。多くの野菜や果物に含まれています。野菜は生野菜を含めてなるべく多く食べて、海藻も取り入れましょう。果物は適量範囲にしましょう。
③カルシウム・マグネシウムを含む食品を摂るように心がけましょう。
カルシウム・マグネシウムが不足することでも、血圧が上がることにつながります。バランス良く、これらを含む食品をとり入れるようにしましょう。
カルシウムが多い食品:乳製品・小魚類・大豆製品・小松菜などの野菜など
マグネシウムの多い食品:ひじき、ほうれん草、大豆製品、マグロ、カツオ、玄米、アーモンドなど
③飽和脂肪酸やコレステロールの多い食品を減らして、オメガ3の多い魚などを食べましょう。
飽和脂肪酸が多い肉・乳製品が多すぎると動脈硬化を進める原因になります。脂の多い肉は減らしましょう。そして、バランス良く魚をとり入れましょう。オメガ3の多い魚はサバ・アジ・さんま・まぐろ・かつおなどです。
④食物繊維が不足しないようにしましょう。
食物繊維は、余分な塩分を外に出す働きがあります。特に水溶性の食物繊維がその効果が高いので積極的に食物繊維の含まれる食品を摂りましょう。
水溶性の食物繊維の多い食品は、海藻類、納豆、おくら、枝豆、オートミール、キウィフルーツなど
⑤体重が増えないように、食べる量に気をつけましょう。
体重計にできれば毎日乗って、ご自身の体重を把握しましょう。
BMIが25以上の場合は、体重を減らすことを心がけましょう。また以前よりも大幅に増えた、20歳の時より大幅に増えている場合も、リスクがありますので体重のコントロールをしましょう。
⑥アルコールはほどほどにしましょう。
アルコールは適量であれば、ストレスの緩和に役立ちますが、度を超えると健康を壊すもとになります。適量はアルコール度数や、個人個人の体質にもよります。飲んで赤くなる人は基本的にアルコール分解能力が低いので、あまり飲まない方が良いでしょう。
赤くならない人も、男性ならビールなら500ml程度、日本酒なら180ml、焼酎140ml、ワイン200ml程度が適量といわれています。女性はその2/3程度です。
またアルコールのおつまみは、塩分の高いものが多いので、つまみは塩分の少ないようなものを選びましょう。
減塩の工夫
・出汁を使って美味しくしましょう。
・レモン、酢、スパイス、唐辛子、山椒、ニンニク、ショウガ、セロリなどの香味野菜、などを使って、アクセントをつけましょう。
・減塩醤油や減塩味噌も適時使いましょう。
・カップラーメンや加工食品は減らしましょう。
・麺類の汁はあまり飲まないようにする。(外食の麺類の汁は一日分の6g以上の塩分が、入っている場合があります。)
・醤油をスプレーでかけると、少なくても味がしっかりついているように感じます。
・漬物は回数や量をきめて、食べ過ぎないようにしましょう。
・スナック菓子やせんべい、スポーツドリンクにも、塩分は入っているので気を付けましょう。
・食品が持つ風味や香り、独特な味など、自然な素材そのものの味を楽しみましょう。
塩分感覚リセット方法
3日~1週間、なるべく味をつけずに、必要最低限の調味料で料理して、素材そのものの味を良く嚙んで食べてみてください。(食材はなるべく新鮮なものを選んで、どうしても必要なものは薄味をつけて食べてみてください。)
水分もなるべく味のない水にしましょう。
1週間後に以前の食事を食べてみると、味の濃さに驚くはずです。
関連する高血圧予防の食事
DASHダイエット
DASH食はアメリカ合衆国保健福祉省の国立心肺血液研究所が高血圧の予防のために考案した食事法です。(DASH diet、Dietary Approaches to Stop Hypertension)
要旨
1、適性体重を維持するため、総カロリーを適性範囲に抑える。
2、高カロリーな脂肪摂取量を減らす。
3、脂肪の質を飽和脂肪酸から魚油にする。
4、ナトリウム(塩分)を減らし、カリウム・マグネシウムを野菜・果物から摂取する。カリウムは3510㎎/日以上。カリウム量が多いので、カリウム制限のある人や腎臓に慢性病がある人は適応できません。)
5、食物繊維を積極的にとる。
減塩でも美味しいレシピ
魚のカレー粉焼
材料2人分:さば2切れ、カレー粉、小麦粉、オリーブオイル、ブロッコリー50g
①さばは水で洗い、水気を拭く。
②小麦粉とカレー粉を合わせて、さばにまぶす。
③フライパンに油を熱し、さばを入れて中火にする。
④反面焼けたら、裏に返してもう片面も焼く。
⑤茹でたブロッコリーを添えて出来上がり!
魚は何の魚でも合います。さばはオメガ3の油を含み、さば特有の臭みをカレー粉がとってくれるので、相性抜群です。
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健診で「血圧が高い」と言われたら
高血圧は自覚症状のないまま、動脈硬化を進め、心臓病や腎臓病、脳出血、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす可能性のある病態です。そのまま放っておかず、受診をしたり、食事や生活に気をつけましょう。
<参考>
臨床栄養ディクショナリー 山本みどり、佐々木公子 大池教子 メディカ出版
ウィキペディア DASHダイエット https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%80%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%83%83%E3%83%88