銅というと10円でおなじみのイメージですね。
銅とは
銅は原子番号29の元素です。古くから使われてきた金属で、紀元前9000年にはもうすでに中東で使われていました。その後も青銅器など、多くの実用品に使われてきました。私たちの身近な所では熱伝導が良いので鍋に使われたり、殺菌効果もあるためキッチン用品やお風呂のグッズなどでも銅が使われているものもあります。
ヒトの体内には、約70~150mg含まれています。約50%は骨や筋肉、8~10%は肝臓に、7%は脳に、その他は心臓・腎臓・骨髄に存在しています。
食事からとった銅は、そのほとんどが小腸で吸収され、肝臓に運ばれます。肝臓でセルロプラスミンというタンパクに合成されて、各臓器に運ばれます。そしてその多くは、最終的に胆汁と一緒に小腸に分泌されて、排泄されます。
銅の働き
1)貧血の予防
銅はセルロプラスミンというタンパク質になって、鉄の吸収と利用を促進します。そして鉄がヘモグロビンとなるためのサポートをします。ヘモグロビンが足りないと貧血になるのです。
2)抗酸化作用
銅はスーパ―オキシドジムスターゼ(SOD)の構成成分のひとつです。SODは活性酸素を除去する強力な力をもつ酵素です。体が活性酸素で酸化すると老化が進んだり、動脈硬化や生活習慣病になりやすくなります。
3)免疫力向上
銅はチトクロムオキシターゼという酵素の構成成分です。チトクロムオキシターゼは、免疫細胞のT細胞や、マクロファージの細胞のエネルギー供給に必要な酵素です。必要なエネルギーがないと免疫が十分に機能できないのです。
4)髪や肌を美しく保つ
銅は髪や肌を美しく保つための酵素にも関係しています。毛髪の色素で肌を紫外線から守るメラニンをつくる「チロシナーゼ」という酵素の構成成分です。銅が足りないと白髪が増えたり、肌を紫外線から守る力も弱くなります。コラーゲンの生成に関わる酵素にも関係しています。
5)新陳代謝を促す
銅は色々な酵素の構成成分です。この酵素が足りなくなると新陳代謝がスムーズにいかなくなります。
銅の必要量
推奨量として 成人男性0.9㎎/日 成人女性0.7㎎/日
mg/日
男性 | 女性 | |||||||
平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 上限量 | 平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 上限量 | |
0~5ヶ月 | 0.3 | 0.3 | ||||||
6~11ヶ月 | 0.3 | 0.3 | ||||||
1~2歳 | 0.3 | 0.3 | 0.2 | 0.3 | ||||
3~5歳 | 0.3 | 0.4 | 0.3 | 0.4 | ||||
6~7歳 | 0.4 | 0.4 | 0.4 | 0.4 | ||||
8~9歳 | 0.4 | 0.5 | 0.4 | 0.5 | ||||
10~11歳 | 0.5 | 0.6 | 0.5 | 0.6 | ||||
12~14歳 | 0.7 | 0.8 | 0.6 | 0.7 | ||||
15~17歳 | 0.8 | 0.9 | 0.6 | 0.7 | ||||
18~29歳 | 0.7 | 0.9 | 7 | 0.6 | 0.7 | 7 | ||
30~49歳 | 0.7 | 0.9 | 7 | 0.6 | 0.7 | 7 | ||
50~64歳 | 0.7 | 0.9 | 7 | 0.6 | 0.7 | 7 | ||
65~74歳 | 0.7 | 0.9 | 7 | 0.6 | 0.7 | 7 | ||
75歳以上 | 0.7 | 0.8 | 7 | 0.6 | 0.7 | 7 | ||
妊婦 | +0.1 | +0.1 | ||||||
授乳婦 | +0.5 | +0.6 |
日本人の食事摂取基準2020より抜粋
銅の過剰症
食品からは、過剰症になることはほぼありません。サプリメントなどで摂りすぎた場合や慢性的に多く摂った時には、消化管障害・肝障害・発育不全などが起きる可能性かあります。
ウィルソン病(遺伝性疾患):肝臓や脳へ銅が溜まってしまう病気です。肝硬変や脳神経障害が起こります。
銅鍋に酢の物やトマト料理など、酸性の食品を長く放置すると銅が食品に溶けだして、中毒になる可能性があります。調理後は他の容器に移し替えましょう。
また銅は、多量にとると毒性があります。以前に「足尾銅山事件」という事故がありました。足尾銅山から流れた水で、川にいた鮎が大量に死んでしまいました。
銅の欠乏症
普通の食事をしていれば、不足することはほとんどありません。
長期的に足りていないと貧血、心臓病、好中球減少症、新陳代謝や抗酸化力の低下、髪の毛の発育不良、白髪などの症状がでることがあります。
メンケス症候群(遺伝性疾患):腸での銅の吸収障害により、発育遅延、毛髪異常、精神神経障害が起きます。
銅と薬の関係
銅はペニシラミン(リウマチ治療薬)の吸収を阻害します。服薬は食事から2時間以上時間をおくことが必要になります。
銅の多く含まれる食品
レバー、ホタルイカ、えび、ピュアココア、カシューナッツ、アーモンドなど
銅を効率的に摂る方法
・サプリメントなどで亜鉛を多量に摂ると、銅の吸収を邪魔します。
・多量のビタミンC、果糖、チオモリブデン酸イオンなども銅の吸収を阻害します。
銅を効率的に摂るレシピ
オレンジナッツココアヨーグルト
材料2人分
ピュアココア大さじ1、アーモンド10粒、マーマレード小さじ1/2、ヨーグルト200g
①アーモンドは刻んでおく。
②ヨーグルトを器にもりつけ、刻んだアーモンドとママレードを乗せる。
③最後に、ココアパウダーを上から全体に振って出来上がり!
食べる時には、全体を良く混ぜて食べると美味しいですよ!
イメージ
<参考>
厚生労働省 日本人の食事摂取基準2020 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf#search=’%E6%A0%84%E9%A4%8A%E5%9F%BA%E6%BA%96‘
国立研究開発法人 医療基盤・健康・栄養研究所 銅https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail582.html
臨床栄養ディクショナリー 山本みどり 佐々木公子 大池教子 メディカ出版
栄養素図鑑 牧野直子 新星出版社