メタボリックシンドロームの人の食事

 

現在治療中、または通院中の方は主治医のアドバイスに従ってください。

健診などで要受診になっている人は早めに受診しましょう。

 

メタボリックシンドロームとは

メタボリックシンドロームは内臓脂肪が蓄積し、それが原因で色々な病気を誘発します。内臓脂肪は腸と腸の間にある脂肪のことですが、増えるとお腹がぽっこりと出てきます。ビール腹といわれるのは、まさに内臓脂肪が溜まっているという危険サインなのです。

皮下脂肪は皮膚のすぐ下にある手でつまめる脂肪ですが、内臓脂肪はもっと奥にある腸など内臓の近くに潜んでいる脂肪なのです。

この内臓脂肪の何が怖いかというと、もともと脂肪から色々なホルモンが出ているのですが、一定の量を超えるとサイトカイン(アディポサイトカイン)の異常が起こります。それが糖代謝異常、脂質異常、高血圧などを引き起こし糖尿病、高コレステロールなどの高脂血症などの発症リスクが高くなります。そして、進行すると動脈硬化が進み脳梗塞、心筋梗塞になる可能性が高くなります。

内臓脂肪量が多く、血糖値高め、脂質異常症、高血圧のリスクが重なると、心臓病の発症危険度はなにもリスクがない人に比べて31.3倍にもなるのです。

おへその周りの下腹部が出てくるのは、ただのビール腹ではないのです。お腹の中では、慢性的に炎症を起こしたり、糖尿病になりやすくなってしまうインスリン抵抗性などが進み、実は怖い脂肪の反乱が起こっているのです。

 

特定保健指導とは

特定保健指導はメタボ指導とも言われています。ただ体重を減らすということが目標のように思われがちなのですが、本来の目的は「内臓脂肪が溜まることで引き起こされる健康リスクを減らしましょう」ということを含めた総合的な生活習慣病予防のためのプログラムです。

 

メタボリックシンドロームの診断基準

ウエスト周囲径(お腹周り:おへその位置を水平に測ります。)

男性85cm以上       女性90cm以上       (内臓脂肪面積100cm²以上)

それに加えて、下記のいずれかもしくは複数が当てはまる

中性脂肪150mg dl以上

HDLコレステロール40mg以下

空腹時血糖値  110㎎/dl  (特定保健指導では、予防のため100㎎/dl以上で当てはまります。)

血圧 収縮期130mmHg以上、もしくは拡張期85mm以上またはその両方

 

メタボリックシンドロームの改善

ライフスタイルの改善による、内臓脂肪量の減少を基本とします。

体重(脂肪量)の減少食事・運動・生活習慣の見直し

 

1)体重を測る習慣をつくりましょう。

忘年会、新年会などのイベント、日々の飲み会やブッフェでの食べ放題などが続いて、しばらくぶりに体重を測ったら3kg以上増えていたという方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、この3kgはなかなか減らないですよね。昔ならすぐ減ったのにと思う気持ちはわかります。中年以降になると特に年々体の代謝が下がり、若い頃よりも必要エネルギーは減っているのです。

体重をこまめに測ると、いつの間にか大幅に増えていたという事がなくなります。少し増えたぐらいであれば、すぐに元の体重に戻せます。それに体重が増えた時に、なぜ増えたのかという原因がすぐにわかりますので、今後の予防にも繋がります。

体重を減らす時には目標体重を設定して、無理なく進めましょう。急激に減らすのは逆に良くないので、減量は月に1~2㎏を目安にしてください。

 

2)内臓脂肪を減らすための食事

①食事全体量を見直しましょう。

必要以上に食べ過ぎていませんか?テレビをみながらや、インターネットサーフィンをしながらなど無意識に何か食べていませんか?

体重を毎日測り、少しずつ増えているようであれば、必要以上に食べているという事です。

数日間、可能であれば毎日、食事記録アプリや食事記録ノートを使って、現在の食事の状況を把握し、見直してみましょう

 

②食べている時間帯を見直してみましょう

私たちの体には、サーカディアンリズムという体のリズムがあります。

体はその体内時計に従って、動いています。朝明るくなったら爽やかに目覚めて、夜暗くなったら眠くなるように、体の中でホルモンや神経が複合的に働いて調整しています。食事もその一つで、例えば朝食を食べる事で、体内時計のリセットに関与しているということがあります。それで体はスイッチが入り活動的に動くことが出来るのです。

逆に夜は就寝時間に近くなるので、体はそのための準備が始まります。

夜がメインの食事になっていませんか?夜に多く摂ると、摂った食事のエネルギーが活動に使われないため、脂肪に変換される割合が高くなります。理想的には夕食は18時頃に食べるのが望ましいのですが、遅くとも21時前には食べ終わるようにしましょう。夜勤がある方もできるだけ逆算して、就寝3時間前までにしましょう。
体のリズムに沿った食べ方をしましょう。

 

③食べる速さを計ってみましょう

食事を食べる時間を計ったことありますか?15分以内で全て食べ終わってしまう場合は、少し食べ方が早いのです。よく噛んで食べるともう少し時間がかかります。食べるのが早いと血糖値や中性脂肪が急上昇しやすく、満腹感も得られにくいために食べすぎにもつながります。

早く食べる傾向は、現代人の忙しい生活に伴い出来てしまった習慣だと思います。でも、せっかく美味しいご飯なのですから、よく噛んで味わって食べ20分以上はかけて食べましょう。よく噛むことで胃の負担も減り、消化が良くなりますし、脳にも良い刺激が伝わります。体からの満腹のサインは、食事を始めてから20分すぎに出てきます。

 

④食べる順番を変えてみましょう。

最近の研究で食べる順番は、食後血糖値や食後中性脂肪の上がり方に大きく関わってくることがわかっています。ご飯などの糖質から食べ始めると、食後血糖値や中性脂肪が急上昇します。そのことで、血糖値スパイクになりやすくなります。血糖値スパイクは、糖尿病になりやすくなったり、血管を傷つける原因になります。食べ初めは野菜やタンパク質のおかずから食べて、後半にご飯を食べ始めましょう

 

⑤甘いものや糖質の摂りすぎに注意しましょう

糖質の摂りすぎは、血糖値を上げるとともに中性脂肪も引き上げます。ご飯や麺類などはあまり大盛にはせず、適量範囲にしましょう。

また、砂糖を使った菓子類は見た目以上にカロリーが高く、血糖値や中性脂肪を上げる原因になります。また高血糖状態が続くと血管が動脈硬化になりやすくなり、体内での炎症も増えるのです。

ジュースや加糖コーヒーなども、大量の砂糖が多く入っているのでご注意ください。また菓子パンはパンではなく、お菓子の一つと見てください。

 

⑥アルコールの摂りすぎに注意しましょう

アルコールの摂りすぎは、直接的に中性脂肪を上げる原因になります。血管を傷つけ動脈硬化になりやすくなります。それに食習慣が乱れがちになります。アルコールは適量範囲にとどめましょう。

適量と言われている量は、純アルコールにして20g程度、お酒に換算すると日本酒1合、ビール500ml、焼酎100ml、ワイン240ml程度です。アルコールを飲んで、赤くなるなどの反応がある人はこの量では多すぎるとも言われています。  

 

⑦野菜を食べましょう

野菜はビタミンや抗酸化物質や食物繊維が多く含まれていて、しかもローカロリーです。食事をよく噛んで食べるために歯ごたえのある野菜を入れると、満腹感も増えます。見た目にも美しい野菜を多く入れて、食事を楽しみましょう。

一日350gが目標なので、夜だけではなく朝や昼にもなるべく野菜を入れましょう。

野菜を多く摂る工夫として、みそ汁などの汁物に多く入れる、鍋料理を増やす、常備菜を時間のある時に作っておくなどはいかがですか?

 

⑧外食は単品料理よりも定食スタイルがお勧め

単品の麺類や丼物は、食材が少なく栄養が偏りがちになります。色んな食材をとることが出来るように、ご飯、味噌汁、おかず数品など定食のようなスタイルがバランス良く食事をとるコツです。

 

⑨外食はほどほどに

外食はボリュームがあって美味しいですが、それが毎日だと体には負担です。

外食の回数はほどほどにして、家でゆっくりよく噛んで食事を楽しみましょう。

 

3)運動習慣をつくりましょう

運動というと激しい運動を思い浮かべる方も多いかもしれません。そんな激しい運動じゃなくても良いのです。なにしろ体を多く動かすことが大切です。日々の生活の中で歩くことを増やしたり、多く階段を使ったりすることも良いのです。

ダンスが好きとか自転車に乗るのが好きとか、好きなものがあれば、楽しくどんどんそれを行ってください。いつの間にかお腹周りがスッキリしてきます。楽しく続けられることを見つけましょう。

1回2回では効果がないので、継続することが大切です。

 

4)今タバコを吸っている人は、タバコをやめることも選択肢のひとつとして考えてみましょう。

タバコを吸っている方は、メタボリックシンドロームのリスクを引き上げると共に、さらに色々な病気のリスクを増やしています。ご自身や、ご家族、周りの大切な人のためにも止めるという選択肢を是非考えてみてください。

今はタバコを止めるための治療薬もありますので、無理なく止めるために禁煙外来に受診をしてみるのも良いのではないでしょうか。

 

メタボリックシンドロームは色々な病気の引き金です。内臓脂肪が減ればリスクも減ります。

あと5年後、10年後も元気で楽しく生活するために、一刻も早く内臓脂肪を減らしましょう。

 

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<参考>

臨床栄養ディクショナリー  山本みどり  佐々木公子  大池教子  メディカ出版

新臨床栄養学 栄養ケアマネジメント  本田佳子  医歯薬出版

病気がみえる  糖尿病・代謝・内分泌   医療情報科学研究所  メディックメディア