カルシウム

カルシウムは骨に多く含まれるほか、血液中にも存在します。体の中ではとても需要の多いカルシウムですが、日本人はカルシウムの摂取量が基準に満たしていない人が多く、不足しがちなミネラルです。普段から意識して取りたいミネラルです。

 

カルシウムとは

カルシウムは原子番号20の金属元素です。体の中で一番多いミネラルで体重の1.5~2%位の重量を占めると言われています。

カルシウムは体内で99%は骨や歯に存在し、あとの0.9%は細胞内に残りの0.1%は血液中に存在します。骨はカルシウムの貯蔵庫であり、血清カルシウム量の調節をしています。血清カルシウム濃度は8.8~10.0㎎/dlという狭い範囲で調整され、これより低すぎても高すぎても問題が生じてきます。低くなるとテタニーというけいれんがおこり、これが続くと骨が脆くなります。高くなると腎臓や消化管など多くの臓器にカルシウムが沈着するなど異常が起こります。血液中に足りなくなると一定量を保つために骨から引き出すので、その状況が続くと骨粗鬆症になります。

カルシウムは吸収率が低く、食事からの吸収率で20~30%と言われています。乳製品は比較的高めで40%程度、小魚などで30%、野菜からは20%程度という報告もあります。

妊娠中など状況によっては吸収率は上がるのですが、なるべく吸収しやすいように食事の組み合わせなども意識すると良いでしょう。

カルシウムは骨を健康に保つほか、筋肉の収縮や細胞内の情報伝達など重要な働きをしているのです。

 

カルシウムの働き

・骨や歯を健康に保つ

カルシウムはまさに骨や歯の原料であり、足りないと成長時には歯や骨が十分に成長できなかったり、骨折しやすくなったり、骨粗鬆症になる可能性があります。

骨は体を支える土台なので、体の姿勢を美しく保ったり内臓を守るためにも、土台がしっかりしていないといけません。

骨はカルシウムの貯蔵庫でもあり、血液中にカルシウムが足りなくなると、骨から血液中に溶けだしてしまいます。また骨の新陳代謝で少しずつ毎日壊されて、新しく作り直すことが行われています。このバランスが壊れると骨が脆くなります。

閉経後の女性は女性ホルモンの量が少なくなるので、このバランスがくずれやすく骨粗鬆症になりやすいのです。

骨量は20歳前後が一番密度が高く、35歳ぐらいから徐々に減っていきます。無理なダイエットや運動不足だと、骨密度のピーク時でも骨密度が低くなる可能性もあります。そのような場合は年をとってから大変なので、若いうちから骨を強くする生活をしていきましょう。

細胞内の情報伝達

カルシウムは、細胞内に1:細胞外10000というバランスで存在します。この割合で存在することで情報伝達が正しく行われたり、ホルモンの分泌や筋肉の収縮も正しく行われるのです。

 

筋肉の収縮

筋肉が動くときにもカルシウムは関連しています。筋肉が伸び縮みする時に、筋肉のタンパク質とカルシウムが結合して動くのです。意識して動かす筋肉だけではなく、心臓の筋肉がが規則的に動いているのもカルシウムが関与しています。

 

ストレス軽減

カルシウムは緊張や興奮を鎮める働きがあります。

 

血液凝固

出血した時に止血するために色々な物質が傷口に集まってきますが、その時に働く酵素を活性化させ、働けるようにしています。

 

神経を健康に保つ

カルシウムは神経が正常に働くためにも必要な物質です。

 

カルシウムの必要量

(mg/日)

男性

女性
平均必要量推奨量目安量上限量平均必要量推奨量目安量

上限量

0~5ヶ月

200200
6~11ヶ月250250

1~2歳

350450350450
3~5歳500600450

550

6~7歳

500600450550
8~9歳550650600750

10~11歳

600700600750
12~14歳8501000700800

15~17歳

650800550650
18~29歳6508002500550650

2500

30~49歳

60075025005506502500
50~64歳6007502500550650

2500

65~74歳

60075025005506502500
75歳以上6007002500500600

2500

妊婦

+0+0
授乳婦+0

+0

日本人の食事摂取基準2020より抜粋

 

カルシウムの過剰症

カルシウムは食事からの過剰症はほぼありませんが、サプリメントなどで一度に多くとると過剰症になることがあります。高カルシウム血症、高カルシウム尿症、軟組織の石灰化などが起きることがあります。高カルシウム血症になると、腎臓や血管にカルシウムが沈着して障害を起こします。

 

カルシウムの欠乏症

カルシウムが足りなくて起きる症状は、骨が脆くなる骨粗鬆症、骨軟化症、くる病、成長期には成長障害、歯の質が悪くなる、イライラする、筋肉痛、認知障害、高血圧、心疾患などです。
カルシウムパラドックスが起きる場合もあります。

<カルシウムパラドックスとは>

カルシウムパラドックスとは、まずカルシウムが不足することから始まります。カルシウムが足りないと骨から血液に溶けだし、細胞に運ばれますが、細胞内に通常時以上にカルシウムが入ってしまいバランスが崩れてしまうのです。そして通常時のようにホルモンの調整をしたり、筋肉を動かすことが出来なくなります。

 

カルシウムの効果的な吸収のために

マグネシウム・リンとのバランスを保つ

カルシウム・マグネシウム・リンは良いバランスで摂ることが、骨を健全に保つためには大切になります。
カルシウムとマグネシウムの比率は2:1
カルシウムとリンの比率は1:1

リンは加工食品に多く入っているので、意識せずとも近年の食生活では摂りすぎになるぐらいです。リンを多くとりすぎるとカルシウムの吸収を邪魔してしまうので、加工品はなるべく減らした方が良いでしょう。

ビタミンD・Kと一緒にとる

ビタミンDはカルシウムの吸収を助けるだけでなく、血中のカルシウムバランスも調整しています。またビタミンKはカルシウムが骨に沈着するのを助けて、カルシウムが離れるのを抑える働きをしています。

嗜好品はほどほどに

アルコールやコーヒーなどに含まれるカフェインは、カルシウムの吸収を邪魔します。また食塩タンパク質の摂りすぎ砂糖の摂りすぎもカルシウムの消費を高めて不足しがちになります。喫煙もカルシウムの吸収を妨げます。

吸収を阻害するものとなるべく組み合わせない

ほうれん草などに含まれるシュウ酸(アク)、フィチン酸多すぎる食物繊維もカルシウムの吸収を邪魔しますので、組み合わせなど気を付けましょう。

適度な運動

宇宙飛行士の方は宇宙にいる間は無重力の状態で体への負荷がないので、帰還した時には骨密度が減っているのです。つまり、骨の密度を保つためには適度な運動や負荷が必要です。

CPPをとる

牛乳など乳製品にに含まれるCPPという成分は体の中でカルシウムが腸で吸収されるときに吸収されやすくします。

ストレス発散をする

ストレスはカルシウムを消耗します。

 

カルシウムと薬

牛乳に含まれるカルシウムが、いくつかの抗菌剤などの薬の働きを弱めるので、飲み合わせに注意が必要です。

 

血清カルシウム濃度の調整

血清カルシウムの濃度の調整は、ビタミンD副甲状腺ホルモンカルシトニンという成分で行っています。

 

カルシウムを多く含む食品

乳など乳製品、骨ごと食べられる小魚(シシャモ、いわし、ワカサギ、ちりめんじゃこなど)、サクラエビ、生揚げなど大豆製品、春菊、青梗菜、小松菜など

 

カルシウムを効果的にとるレシピ

<ワカサギと野菜の天ぷら>

材料 2人分

ワカサギ10匹、小麦粉、油、マイタケ50g、人参20g、モロヘイヤ40g、麺つゆ 大さじ2、塩、抹茶

①マイタケは一口大に切り、ニンジンは拍子木切りにする。
モロヘイヤは葉を茎からとり洗っておく。
③小麦粉を冷水でとき、揚げ衣をつくる。
④麺つゆは既定の量で希釈しタレを作る
⑤マイタケに衣をつけて揚げる。次に人参とモロヘイヤを合わせて揚げる。
⑥ワカサギに衣をつけて揚げる。
⑦揚げた天ぷらを盛り合わせて、出来上がり!好みでタレか抹茶塩を付ける。

 

 

 

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<参考>

厚生労働省 日本人の食事摂取基準2020 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf#search=’%E6%A0%84%E9%A4%8A%E5%9F%BA%E6%BA%96

国立研究開発法人 医療基盤・健康・栄養研究所  https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail39.html

栄養素図鑑   牧野直子 新星出版社

臨床栄養ディクショナリー 山本みどり 佐々木公子  大池教子 メディカ出版

よくわかる栄養学のきほんとしくみ 中屋豊   秀和システム