脂質について
油の摂りすぎはいけないとか、オリーブオイルは体に良いとか、聞いたことがあると思いますが、本当のところはどうなんだろうと思ったことはありませんか?
油はバランスよく適量であれば、体には必要なものです。そして積極的に摂った方が良い油とそうでない油があります。油は目に見える油(瓶などに入って料理に直接使う油)と目に見えない油(食材や加工品の中に入っている油)があります。
バランス良く適量に油を摂るにはどうすれば良いのでしょうか?
順番に見ていきましょう。
油の種類
<種類別>
植物油:大豆油・菜種油・サフラワー油、オリーブ油・ごま油・ココナッツオイルなど
動物脂:バター、ラード、ヘッド、肉に含まれる脂身、乳製品(生クリームなどに多く含まれます。)
魚油:魚に含まれる油(さば・イワシ・さんま・マグロなど油の多い魚に多く含まれます。)
加工油脂:ショートニング・マーガリン・ファットスプレットなど
<成分別>
飽和脂肪酸(短鎖脂肪酸・中鎖脂肪酸・長鎖脂肪酸)、不飽和脂肪酸(オメガ3、オメガ6、オメガ9)、トランス脂肪酸に分かれます。
1)飽和脂肪酸
飽和脂肪酸は動物の脂に多く含まれ、室温では白い脂肪の固まりになります。主にエネルギー源になります。体の中では多く摂りすぎるとコレステロールを上げる原因となり、動脈硬化及び心臓病や脳梗塞にもつながりやすくなります。肉や卵、乳製品など動物性の食品を食べる機会が多い人は、食べる量に比例して飽和脂肪酸をとっている量も多くなります。
①短鎖脂肪酸
短鎖脂肪酸は酪酸があります。バター、生クリーム、チーズなどの乳製品に含まれています。
②中鎖脂肪酸
ラウリン酸でココナッツオイルやヤシ油に含まれます。
最近、話題に上がることの多いココナッツオイルは中鎖脂肪酸のラウリン酸を多く含んでいます。吸収が早くエネルギー源になりやすいことから人気となりました。中鎖脂肪酸に関しては、エネルギーになりやすく体脂肪となりにくいと言われていますが、適切に摂る分には良いのですが、多く摂りすぎると嘔吐、下痢、腹部膨満感などを起こす可能性があります。
③長鎖脂肪酸
パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸でラード、ヘッド、脂身の多い肉に含まれます。
2)不飽和脂肪酸
主に植物性の油や魚油に多く含まれています。室温では液体です。不飽和脂肪酸の中にもいくつか種類が分かれます。多価不飽和脂肪酸(オメガ3、オメガ6)、一価脂肪酸(オメガ9)があります。
①多価不飽和脂肪酸
オメガ3系
αリノレン酸、EPA、DHAのことを言います。αリノレン酸は体の中でEPAやDHAに変換されます。αリノレン酸は私たちの体の中で作ることが出来ないので必須脂肪酸です。
体の中では炎症を抑えたり、中性脂肪の値を下げたり、血液をサラサラにして血栓を予防する働きをします。動脈硬化や認知症の予防、アレルギーの予防やうつ病の発症を抑えるなど、体には必要な油です。またDHAは脳や神経の構成成分です。
熱や光にはとても不安定で酸化しやすいため、加熱調理には向きません。保管も開封後は冷暗所にしましょう。クルミなどもあまり加熱せずに食べるのがお勧めです。保存も日の当たらない涼しい場所に保存しましょう。魚は加熱したら、なるべく早く食べましょう。
オメガ3系の油の多い食品:脂の多い魚の魚油、くるみ、エゴマ油、亜麻仁油、チアシードなどに含まれます。
オメガ6系
リノール酸、γリノレン酸、アラキドン酸のことをいいます。体の中で作ることの出来ないリノール酸は必須脂肪酸です。体の中ではコレステロールを下げる働きがありますが、同時に善玉コレステロールも減らしてしまいます。また多く摂りすぎると炎症を促進してしまう可能性があります。そのため摂りすぎは良くないと言われています。また、油は酸化しないように保存は気をつけましょう。
オメガ6系の多い食品:コーン油や大豆油、ひまわり油、サフラワー油に多く含まれています。この油を使った食品として、揚げ物、スナック菓子(ポテトチップス、揚げせんべいなど)、揚げ麺など
オメガ3とオメガ6の理想的な割合は1:4と言われています。現在、この割合は1:10~50と言われています。油で揚げてあるものや加工品にもオメガ6系の油は多く入っています。このアンバランスの摂取量が健康を害する原因となっている可能性があります。
②一価不飽和脂肪酸
オメガ9系
オレイン酸のことをいいます。体の中ではLDLコレステロール(悪玉)を減らし、HDLコレステロール(善玉)を増やす働きがあります。酸化しにくい性質を持っています。
オリーブオイル、アボカドなどに多く含まれています。
3)加工油脂
トランス脂肪酸
トランス脂肪酸は、2種類あり、牛の脂などに多少含まれているものと人工的に植物油に水素添加をして固まるように作った油です。問題になっているのは後者の人工的に作った油脂の方です。ショートニングやマーガリンが代表的なものです。菓子や加工品にも多く入っていて、植物油脂・加工油脂、ファットスプレットと表記がされてある場合もあります。一昔前はバターの代わりにマーガリンの方が健康に良いと聞いたことのある方もいらっしゃると思いますが、研究が進むごとに体に害があることがわかってきました。
その害とは、コレステロールを上げたり、動脈硬化や心臓病・脳梗塞や認知症などのリスクを増やします。また活性酸素を増やしたり、炎症を促進します。老化を早めます。代謝の過程で体に必要なビタミンやミネラルを沢山浪費します。
不自然な加工から、食べるプラスチックともよばれています。なるべく摂るのを控えた方が良い油です。WHOから2023年までに使用をなくす計画が2018年に発表されています。トランス脂肪酸アメリカ・カナダ・ヨーロッパ諸国では使用が規制されていますが、日本ではまだ規制はされていません。
安価で加工に便利であったり、バターの代わりに風味や食感を良くしたり、使うことで賞味期限を延ばすことが出来るので多くの加工食品に使われています。
トランス脂肪酸が多く含まれている食品
マーガリン、ショートニング、クッキー、ドーナッツ、ポテトチップスなどスナック菓子、洋菓子、菓子パン、パン、シリアル、インスタントラーメン、マヨネーズなど。植物油脂・加工油脂とも書いてあるので、なるべく成分表示を確認しましょう。
体内での油の働き
油はその種類にもよりますが、体内で細胞膜、脳、神経組織やホルモンの原料になります。脳のおおよそ60%が脂質で出来ています。またエネルギー源として不可欠で、1g9㎉のエネルギーを産出します。脂溶性ビタミンを体内で有効に使えるようにしたり、ビタミンD、ステロイド類、生理活性物質の原料にもなります。
トランス脂肪酸はLDLコレステロール(悪玉)を増やし、HDLコレステロール(善玉)を減らします。炎症を増やしたり、害が心配されます。
油をバランスよくとるために
1、油の摂取基準
脂質の食事摂取基準は成人で摂取カロリーの20~30%
そのうち飽和脂肪酸は7%以下
トランス脂肪酸は1%以下、できれば無い方が望ましい
オメガ6:オメガ3 = 4 : 1
飽和脂肪酸 :一価不飽和脂肪酸 :多価不飽和脂肪酸= 3:4:3
n6系脂肪酸 | (g/日) | n3系脂肪酸 | (g/日) | |
男性 | 女性 | 男性 | 女性 | |
18~29歳 | 11 | 8 | 2.0 | 1.6 |
30~49歳 | 10 | 8 | 2.0 | 1.6 |
50~64歳 | 10 | 8 | 2.2 | 1.9 |
65~74歳 | 9 | 8 | 2.2 | 2.0 |
75歳以上 | 8 | 7 | 2.1 | 1.8 |
日本人の食事摂取基準2020より抜粋
2、バランスを良く油を取るために普段の食事で気を付けたいこと
①週に3~4回以上は魚料理を入れて、オメガ3系の油をとるようにする。
②揚げ物やサラダ油などを多く使う料理は減らす。
③オリーブオイルを適度に使う。
④脂身の多い肉やバターや生クリームを減らす。
⑤トランス脂肪酸の入っている食品は避ける。
⑥加工品はなるべく減らし、手作りできるものは手作りにする。
⑦食品の中に含まれる油も含めて一日量が摂取カロリーの20~30%なので、料理に使える量は一日当たり大さじ1~1.5杯程度を目安にする。
⑧おやつはスナック菓子や洋菓子などの代わりにナッツ類をとり入れる。
⑨パン食はご飯食に比べて、油をとる量が多くなりがちです。食習慣を見直してみましょう。
油の注意点
油は酸化すると過酸化脂質となり毒性があります。動脈硬化を進めたり、発がん物質になります。老化も進めます。
高温で揚げてあるものは特に酸化しやすく注意が必要です。揚げ物は食べないに越したことはありませんが、食べる機会がある場合は、出来たてを食べたり、できる限り回数を減らすようにしましょう。瓶に入っている油や油を使ってある製品は、店での保存方法を確認したり、高温の場所や日の当たる所に置いていないか、家での保存場所にも注意しましょう。また賞味期限も必ず確認するようにしましょう。
<参考>
農林水産省 https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_kokusai/
厚生労働省 日本人の食事摂取基準2020https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf#search=’%E6%A0%84%E9%A4%8A%E5%9F%BA%E6%BA%96
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