腸は私たちにとって、とても重要な役割を果たしています。近年ではその役割が今まで以上に分かってきました。
腸の構造
腸は小腸と大腸に分かれます。
小腸:十二指腸、空腸、回腸
大腸:盲腸、結腸、直腸
腸は、体の中でかなり広い面積を持った器官です。小腸だけでも、ひだも全て広げてみるとなんとテニスコートと同じ広さになります。
その構造は、私たちが食べた食物や水分をしっかり吸収できるような仕組みが整っているとともに、食物に付いていた細菌や外から入ってきたウィルスなどが、体の中に侵入できないような仕組みも整えられているのです。
腸は体の臓器の一部ですが、外界から来た食品が直接侵入する部分でもあります。体内ではありますが、外と直接的に接する臓器でもあるのです。
腸の中は絨毛というヒダが付いていて、さらにそこに微絨毛というものに覆われています。その微絨毛から栄養を吸収しています。そして蠕動運動で腸自体が動きながら、食物などの内容物を先に送っています。
腸の役割
1)消化管として、消化液が出て食べ物を消化します。
2)消化された食品や水分を体の中に吸収します。
3)食物残差や老廃物などを便として排出します。
4)免疫機能に影響を及ぼします。
5)腸内細菌がビタミンを合成します。
6)小腸粘膜はセクレチンというホルモンを分泌します。セクレチンは膵臓から膵液を分泌させる作用があります。
腸は第二の脳
腸は脳の指令がなくても、腸自身で判断して動くことのできる臓器です。それゆえ第二の脳とも言われています。
脳腸相関
腸と脳は密接なつながりもあります。自律神経やホルモンや免疫のサイトカインなどを通して連絡を取り合っています。これを脳腸相関(brain-gut interaction)といいます。
消化管の情報は、自律神経で大脳に伝わります。例えば腹痛・腹部不快感などですが、それと共に不安や抑うつ的な感情を引き起こします。それが副腎皮質ホルモンや自律神経を通して腸に伝えられ、腸の動きが悪くなるのです。また過敏性大腸炎のような例もあります。
それと細菌では、さらに腸内細菌も脳と腸の関連に関わっているのではないかという研究も進んでいます。その関係を「脳-腸-腸内細菌軸(brain-gut-microbiome axis)」と呼ばれています。
腸内細菌が長寿のカギ?
腸の中には沢山の細菌が住んでいます。その数はなんと1000種類、100兆個です。その中に、人間(ホスト)の役に立つ菌が善玉菌、悪さをする悪玉菌、どちらでもない菌(日和見菌)がいます。
その菌との関係で、健康状態や寿命が変わるかもしれないくらい私たちにとって重要な存在です。
奄美諸島の長寿の人の腸内細菌を調べた研究では、多くの長寿の人が善玉菌が優勢な健康な腸をもっているという結果がでています。通常、年をとると悪玉菌の割合が少し上がってくる人が多いのです。全国の中でも長寿の人の割合の多い奄美地方では、長寿で健康な人の腸内は多様性があり、善玉菌の割合が多かったのです。しかし、奄美諸島でも健康状態の悪化に伴って、多様性は減り、悪玉菌が増えていたという結果がでています。健康で長生きする秘訣のなかに腸内細菌は大きく寄与している可能性が高いのです。
奄美地方の伝統食は適量のタンパク質、各種ビタミン、各種ミネラル、ポリフェノール、食物繊維、不飽和脂肪酸を多く含むのが特徴ということです。その食事も良い腸内フローラを保つ上で役立っているものと思われます。
腸内細菌と健康
腸内細菌は、私たちの健康にとても関係が深いことが近年特にわかってきました。
消化・吸収に関わっているだけではなく、ビタミンを合成したり、免疫機能や気分にまで関わることが分かっています。それは、健康はもちろんのこと、アンチエイジングや美しさを保つ上でも重要です。
腸内の細菌フローラのバランスによって、あなたの今後の健康状態が変わってきます。
腸内細菌のバランスが取りやすくなるよう食生活や日常生活を工夫をして、美しい腸内フローラを作りましょう。
<参考>
厚生労働省 e-ヘルスネット https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-003.html
公益財団法人 日本ビフィズス菌学会 https://bifidus-fund.jp/keyword/kw033.shtml
徳洲会グループ 徳州新聞ダイジェスト https://www.tokushukai.or.jp/media/newspaper/1201/article-1.php