高尿酸血症(痛風)の人の食事

 

痛風は昔は贅沢病といわれ、グルメや接待の多い中年の方の病気と思われていました。しかし今は若くても発症する人が増えています。痛風はその名前の通り、風が当たっただけでも痛いほど、その痛さは大変です。

健診で尿酸値が高いと言われたことはありませんか?痛風になっていない前の今だったら、まだ痛さを経験しなくてすむかもしれません。今が食生活を変える時なのです。

以前はプリン体を含む食品を減らすことが重要とされていましたが、体内でもプリン体は作られますので、今はそれだけでは改善しないことがわかっています。生活習慣の見直しが必要です。

(健診で要受診になった人は、なるべく早めに受診しましょう。現在、治療中の人は主治医のアドバイスに従ってください。要様子観察の人は食生活や運動習慣の見直しをしましょう。)

 

痛風とは

体は常に新陳代謝を繰り返し、新しい細胞に入れ替わっています。細胞の核酸の構成成分にプリン体があり、必要量は常に体内にプールされています。そのプリン体を使って細胞の核酸をつくります。そして、細胞の入れ替わりの時に、古い細胞の老廃物となったプリン体が、体外へ排出されるのですが、プリン体はそのままの形では排出できないので、尿酸という形になります

また体内での合成に加え、体外からも食事の中に入っているプリン体を取り込みます。プリン体は体内の生合成のためには必要なのですが、多すぎると問題が生じます。

体外に排泄されることが出来ずに、残った尿酸が多い状態が高尿酸血症です。その状態が続くと、いつ痛風になってもおかしくはありません。血液中の尿酸値が7mg/dlを超えると、痛風になる可能性が高くなるといわれています。

そして、血液中に多くある尿酸が足指の付け根や関節などで結晶化し、激しい痛みを引き起こすのが「痛風」です。また関節に溜まらずに尿路結石腎結石のもとになることもあります。

プリン体とは

体内でアミノ酸からつくられる核酸(DNA RNA)の原料です。プリンヌクレオチドに含まれています。プリンヌクレオチドは水に溶ける性質があり、それが「旨味」成分であるため、出汁として使われます。そのため、出汁の効いた汁物にはプリン体が多く入っています。

 

高尿酸血症のタイプ

産生過剰型:体内で尿酸が過剰に産生され、排出が追いつかない状態です。

排泄低下型:体内での生産量は普通ですが、体外への排出が少ない状態です。

混合型産生過剰型と排泄低下型の両方が混ざり、尿酸が多く作られすぎるのに、体外へ出にくいという状況になっています。アルコールを多く飲む人体重過多、メタボリックシンドロームは、このタイプが多いのです。

 

高尿酸血症の症状

尿酸値が高いだけの時には症状はありません。痛風になると、足指の付け根や関節などに激痛、赤く腫れるなどの症状がでます。

 

高尿酸血症の判定

血清尿酸値  7.0㎎/㎗以上

 

高尿酸血症の治療

食事療法、服薬治療

 

高尿酸血症の改善のために

食事の改善、飲酒量を減らす、軽い有酸素運動、体重の減量、主治医から薬が処方された場合は服薬治療

体重の減量について過体重は尿酸値を上げるひとつのリスクです。標準体重になるように減量をしましょう。体重をこまめに測る習慣をつくりましょう。
短期間に急激に減量すると、尿酸が増えるリスクがあります。月に1~2kg程度で目標を立てましょう。

 

高尿酸血症の食事療法

 

①エネルギーは摂りすぎないようにしましょう。

一日分の必要カロリーの計算方法
目標体重に合わせて、必要カロリーを設定しましょう。

BMI計算方法 体重(kg)÷身長×身長(m)=BMI

標準体重 BMI18.5~24.9  理想体重BMI22

(BMI22が理想体重なのは、統計で一番病気が少ないと言われている数値だからなのですが、体格は個人差があります。標準体重内でご自身の体調に合わせて目標体重を設定しましょう。)

BMI25未満  標準体重×25~30㎉
BMI25以上  標準体重×20~25㎉

計算例
身長170cm、体重75kg
BMI  75÷1.7×1.7=27.0
体重目標をBMI24.0にしたとして
24×1.7×1.7=69.5㎏ (75㎏-69.5㎏=5.5㎏の減量、3~6か月かけて減らしましょう)
必要カロリー 69.5㎏×25㎉=1738㎉

 

②タンパク質は必要量以上に摂りすぎないようにしましょう。

多く摂りすぎるタンパク質は、尿酸を増やす原因のひとつです。必要なタンパク質は、毎食に少しずつ入れて、1回に多く食べすぎないようにしましょう

卵、脂の少ない肉、魚、豆腐などを適量(必要量にもよりますが、おおよそ60~100g程度)毎食に入れましょう。

タンパク質必要量g=体重(㎏)×1.0g

例)体重70㎏の人の必要量   タンパク質70g  1食あたり 20~25g程度

 

③プリン体を含む食品は減らしましょう。

レバーなどの内臓、白子、いわし、かつお、煮干しだし、コンソメスープ、ラーメンスープなど

 

④脂肪は摂りすぎないようにしましょう。

脂肪の摂りすぎも尿酸を増やすひとつの原因です。脂肪の摂りすぎは、尿酸の体外への排出を低下させます。また体重増加にもつながります。

・油は食品中にも多く含まれています。脂肪の多い肉や乳製品は減らしましょう。脂肪の多い肉は、バラ肉、霜降り肉、3枚肉、ひき肉などです。乳製品は、牛乳の飲みすぎ、生クリームやチーズの摂りすぎなどに気をつけましょう。

揚げ物は減らしましょう。油は植物性の油にして、炒め物やドレッシングなどで使う程度にしましょう。

 

⑤糖質は適量範囲にしましょう。

なるべく一緒に食物繊維も摂れるものを選びましょう。主食のご飯は無精製のものであれば食物繊維やビタミンも一緒にとることができます。(玄米や全粒粉パンなど)

果糖の摂りすぎは尿酸を増やします。なるべく控えめにしましょう
果糖を多く含む食品:果物、はちみつ、砂糖を多く含むもの(菓子類、ジュース)、アガベシロップ、ブドウ糖果糖溶液が入っているものなど。

 

⑥野菜はなるべく多く食べましょう。

野菜や海藻などは、尿をアルカリ性に傾けます。尿がアルカリ性の時は、尿酸が外に出やすくなります。積極的にとりましょう。

 

⑦アルコールは控えましょう。

アルコールを飲むと体内で尿酸が作られる量が多くなります。また体外に出にくくしてしまうので、控えましょう。特にビールはプリン体も含んでいるので、相乗的に尿酸値を増やします。

 

⑧水分を積極的に多めに摂りましょう。

水分はできれば、何も添加物のない水または白湯が一番良いのです。水または白湯をとり、味のあるものが欲しいときは時々カフェインや糖分のないお茶にしましょう。水分が不足すると尿酸が外に出ませんので、水分を積極的にとりましょう。カフェインが含まれるコーヒーやお茶は利尿作用があるので、水分としてはカウントできません。

アルコールは水の代わりにはなりませんのでご注意を!

 

⑨塩分は控えめにしましょう。

尿酸が多いと、それだけでも血管や腎臓に負担がかかっています。高血圧や腎臓病の予防のためにも塩分は薄味にしましょう。

 

運動に関して

負荷の多い筋トレに関しては、尿酸値を上げる場合があります。

運動を行う際は、ウォーキングなど軽い有酸素運動がお勧めです。

主治医から運動に関して、アドバイスがある方はその通りに行いましょう。

 

尿酸値が高めの方は、食習慣を早めに変えて、痛くなる前に予防しましょう。

数値が高めの方は、早めに受診しましょう。

 

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<参考>

臨床栄養ディクショナリー   山本みどり  佐々木公子  大池教子  メディカ出版

新臨床栄養学 栄養ケアマネジメント  本田佳子  医歯薬出版

病気がみえる3  糖尿病・代謝・内分泌 医療情報科学研究所  メディクメディア